中小企業のAI導入は何から始めるべきか|69業務を棚卸しした実例で解説
「AIを導入したい」と相談を受けるとき、多くの会社がまずツールの比較から始めようとします。ChatGPTがいいのか、専用の業務システムがいいのか。実は私たちも同じ順番でつまずいた経験があります。この記事では、株式会社PROSTが自社の業務を69項目まで棚卸しし、月497時間の削減計画を実行するに至った経緯と、そこから見えた「最初にやるべきこと」を実例ベースでお伝えします。
最初にツールを入れて失敗した話
私たちが最初にやったのは、良さそうなAIツールをいくつか契約することでした。チャットボット型のFAQツール、文字起こしツール、画像生成ツール。どれも単体では便利でしたが、半年経って振り返ると、実際に定着して使われ続けていたのはごく一部でした。
原因は明確でした。「どの業務にどれくらい時間がかかっていて、AIに任せてよい判断の範囲はどこまでか」を整理する前に、ツールの機能から入ってしまっていたのです。ツールに合わせて業務を変えようとすると、現場が抵抗します。逆に、業務側の負荷や判断の重さを先に把握していれば、そこに合うツールを選ぶだけで済みます。この順番の違いが、定着するかどうかを大きく左右すると私たちは考えています。
ツール選定の前にやるべき「業務の棚卸し」
ツールを入れ直す前に、私たちは自社の全業務を洗い出すところからやり直しました。広告運用、SNS投稿、問い合わせ対応、議事録作成、LINE配信、経理処理など、部門を横断して合計69の業務項目をリストアップしました。
この棚卸しで重要だったのは、「AIっぽいことができそうか」ではなく、「頻度・所要時間・判断の複雑さ」という3つの軸で業務を評価したことです。この軸を決めたことで、感覚ではなく数字で優先順位を議論できるようになりました。
頻度×所要時間×判断の複雑さで仕分けるフレームワーク
私たちが使っている仕分けの考え方は次の3つです。
- 頻度:毎日発生するか、週1回か、月1回かで自動化の投資対効果が変わります
- 所要時間:1回あたり何分かかっているかを実測します。感覚値ではなく、実際に計測した数字を使うことが重要です
- 判断の複雑さ:定型的な判断で完結するか、都度の状況判断が必要かを分けます
この3軸を掛け合わせると、業務は次のように整理できます。
| タイプ | 特徴 | 対応方針 |
|---|---|---|
| 頻度高・時間長・判断単純 | 毎日発生し時間を食うが、ルールが決まっている | 最優先で自動化 |
| 頻度高・時間短・判断単純 | 件数は多いが1件は軽い | まとめて自動化しやすい |
| 頻度低・時間長・判断複雑 | たまにしか発生せず判断も重い | AI任せにせず人が対応 |
| 頻度高・判断複雑 | 件数は多いが個別判断が必要 | AIは下書き作成まで、最終判断は人 |
私たちの場合、この仕分けで最優先になったのが「LINE公式アカウントの自動返信」「SNS投稿の下書き作成」「議事録作成」でした。いずれも頻度が高く時間を食う一方、判断のルール化がしやすい業務だったからです。
実際に自動化した業務と削減計画の中身
棚卸しと仕分けの結果、私たちは69業務のうち自動化の優先度が高いものから着手し、月497時間の削減を見込む計画を立てて、現在実行中です。すでに形になっている取り組みは次の通りです。
- LINE公式アカウントのCRMを自社開発し、外部ツール費用を月0円にしました
- Threadsの投稿を1日5本、AIが自動生成する仕組みを構築しました
- AI講座の教材を全30レッスン、自社で構築しました
これらはすべて、最初から狙って作ったものではなく、69業務の棚卸しで「頻度が高く、判断がある程度定型化できる」と判定された業務から順に着手した結果です。月497時間の削減は、計画段階の見込み数値であり、私たちはこれを実行中の途中経過として扱っています。実行してみないと分からない誤差は必ず出るため、数字を確定させず走りながら検証しています。
これから始める会社が最初にやるべきこと
もしこれからAI導入を検討するなら、私たちが遠回りした経験から言えるのは、ツールを探す前に自社の業務リストを作ることです。完璧な69項目である必要はありません。まずは思いつく業務を20〜30個書き出し、頻度・所要時間・判断の複雑さで並べ替えるだけで、着手すべき順番が見えてきます。
この作業は難しい分析ではなく、現場の実態を数字にする作業です。私たち自身、最初のツール導入の失敗を経てこの順番にたどり着きました。同じ遠回りをせずに済むよう、棚卸しから始めることをお勧めします。
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